イノシシのいる山へ
車に霜が降りるくらいの気温の中、仕掛けた罠にイノシシがかかっているかを確認に行きました。私の祖父は兼業猟師なので、ガンガン罠を仕掛けガンガンイノシシを捕まえます。本業は車の整備をやっています。ですが仕事中に罠を作ったり、イノシシをさばいたりしているのでそこらへんは大雑把なようです。
車で山の中へ到着。祖父は80歳、罠を入れたバッグを抱え、ずんずん進んでいきます。
道かどうかよくわからんところをすいすい登ります。私はもう息があがりましたが祖父は息切れひとつ起こしません。30年以上前から猟をしているらしく、もう坂は慣れたそうです。ホントに80歳?
山の中に入ると途端にあたりが静かになります。枯れ葉のさくさくとした音、踏んだ木の枝の折れる音、遠くで木の葉がすれる音、鳥のさえずる音、それ以外の音は全くしません。こんなに静かで誰もいないところに来るのは久しぶりです。
しばしボーっとしていたらいつの間にか祖父の後ろ姿が小さくなっていました。電波もないし遭難しかねないので急いで追いかけます。
祖父が立ち止まり、罠のコツを教えてくれます。まずイノシシが通る道、導線となる道を見つけることが肝要だそうです。さて、どこをイノシシが通るでしょうか。
正解はここです。なんとなく道ができています。イノシシは基本的に通る道を決めて行動するので、イノシシを捕まえるためには道の確保をすることがまず必要です。闇雲に仕掛けても時間と罠の無駄になってしまいます。
足跡もありました。蹄の跡が残っています。イノシシの存在を確実に認めます。イノシシは歩幅が一定のため、等間隔に足跡があります。全くいる気配がしませんでしたが、山のどこかにいると考えるとなんだか不思議な感じがします。
イノシシの通り道あたりに罠を仕掛けます(祖父が)。罠の作りは門外不出だそうですが、聞いたら教えてくれたので案外そういうものなのかもしれません。
仕組みは、イノシシが穴を踏み抜いたらバネが作動し、ワイヤーが足首を締める、という単純なものです。ですが、いろいろコツがあるらしく、罠の奥深さたるや……。
割りばしで覆いをします。この割り箸を踏めば罠が作動します。小学校のとき、校庭の砂場で落とし穴を作り、大勢がケガをしたので砂場が使えなくなった思い出が蘇りました。
その上に枯れ葉を載せてカモフラージュします。イノシシは非常に警戒心が強く、ワイヤーなど少しでも怪しい部分があれば道を帰るので、カモフラージュを徹底しなければなりません。
罠を仕掛け終わり、他に罠を仕掛けたポイントを回ります。12個ほど仕掛けていたそうですが、どれも当たりはありませんでした。残念……
ちなみにもし罠に掛かっていた場合は一旦戻り、イノシシを突き殺すための槍を取りに帰るそうです。
イノシシは捕まりませんでしたが、いくつか痕跡を見つけることはできました。こちらはイノシシが牙でつけたマーキングです。木の皮がえぐれています。
こちらはイノシシのお風呂らしいです。イノシシは意外にもきれい好きのようで、体についたシラミや汚れを行水で落とすそうです。
体がかゆくなったら壁に体を擦り付けたりもします。そのためか、後ろの土壁は磨かれたようにスベスベになっていました。
こうした生活の営みを見つけると、少しだけイノシシが身近になった気がします。農作物を荒らす害獣ですが、やはり山に住む動物であり、それぞれの生活があるのだと実感させてくれます。
帰り道、祖父が立ち止まり、「ここらへんに先生の仕掛けた罠がある」と先生の仕掛けた罠を確認していました。祖父が慕う先生とは、地域で1番イノシシを獲っている人で、この人の仕掛けた罠はとにかくものすごいのだそうです。
80歳になってもまだ勉強することがあるとは。年を取っても物事を新たに吸収するようなアクティブな人間でありたいなと思います。
今回はイノシシを捕まえることはできませんでした。しかし、次回こそはイノシシを捕まえて槍で突きたいです。乞うご期待!
おわり
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