右腕を折ってみた

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右腕を折ってみました。GBA版のワリオランドアドバンスのように何度も壁にタックルしたら意外と簡単に折れました。それでもあんまりきれいにポッキリとはいかず、内出血部が膨らみ、張り付いたような鈍痛が治らないので病院に行ったら実は折れてたとわかったようなものです。あっ、こうやったら折れるんだなというものが実感とともにわかりました。痛い、痛いよ、痛い痛い痛い、骨は折るものではないですね。痛い。

 

以上の一連のやつは全部ウソです。全部想像です。私は骨を折ってはいません。骨を折ってはいないのですが、右腕を三角巾で吊ったのは本当です。

 

会社で、骨を折った人間の仮装をする必要があったので右腕を三角巾で吊ってみたのです。そうすると何かえもいわれぬ安心感とフィット感に驚きました。驚いたのでそのまま三角巾で腕を吊って退社しました。右腕を折ってみた、というのはそういうことです。

 

腕を吊って外に出ると思ったより自分の腕が周りの注目を集めていることがわかります。通りすがり、すれ違いざまにサッと目を向けられます。そりゃわかりやすく腕を折ってる人がいたら見ちゃいますよね。駅へ向かいます。

途中携帯を取り出そうとして手間取ります。私は右利きなのでいつも右ポケットに携帯を入れているのですが、右腕は吊っているので取り出せません。左腕を不自然に曲げて携帯を取り出します。そしてメールなどを確認しながら駅へ。

ここではICカードを取り出すのに手間取ります。ズボンの右ポケットに入れているものを左手で取り出し改札へ。右腕が使えなくなってはじめて気づきましたが、左利きの人って改札通るの不便ですね。わざわざ体をよじらなければいけない。右手ではまったく意に介さなかった動作が次々と障害になっていきます。

改札を通り抜けてエスカレーターへ。東京は左側に並びます。腕を吊っている右側を人がせかせかと通り抜けていくので、その度に腕が人に当たらないかひやひやします。もし当たってしまったら大ダメージは必至です。ここまで他人を脅威と認識したのは初めてかもしれません。

電車に乗ると再び腕に視線が集まります。左腕でつり革を持ちます。右手は三角巾を裾を掴んでギュッと固定。そうすると何もできません。スマホを触ることなどできず、揺れる体を支えるので精いっぱいです。

次々と人が乗り込んできました。折れている(体の)右腕が乗客と接するくらいの混みようです。いつ隣の他人が自分を傷つけるか、他人の所作振る舞いに非常に敏感になります。揺れに流れて軽くしなだれてくる他人、もしマジで右腕が折れていたら鈍か強い痛みが私を襲ったでしょう。乗客は全て敵、そう見なすのに時間はかかりませんでした。

辺りを見回すと他人の荷物がとても気になり出します。重たそうなバッグ、傘の先端、バンドをやってる人の背負っているギターケースの可動域、全てに注意を払います。その全てが私を傷つけかねないからです。ギターケースが腕に当たりライフが1機減りました。

 

最寄りの駅に着きます。降りがけに背広を着た人の硬い革のバッグが当たりまた一機減ります。ここでもまた改札に難儀します。左利き専用の改札があればまた利用しやすくなるのかなとは思いますが別にそんなこともない気がします。

改札を抜け西友へ。いつもは食費を抑えるために自炊をするのですが、右腕が折れているのでご飯さえ炊けません。出来合いの何かを買うことにします。

買い物にも一苦労です。左腕でカゴを持っているともう何も手に取ることができません。まずカゴを床に置き、商品を手に取り、カゴに入れて持ち上げるということをしなくてはなりません。

 

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買ったのはチキン南蛮弁当、特盛の字に男の悲哀がにじみます。普段は弁当は買わないのですが(悲しくなるので)、状況が状況だと仕方ないですね。電子レンジで温めて、生ぬるくなったポテトサラダと隅っこがベチャベチャになったごはんをもそもそと食べます。無論、慣れない左手で箸を持つため幾度となくチキン南蛮を取りこぼし白い三角巾を汚します。通常より食べるのに時間がかかってしまいました。虚しい時間が引き延ばされ、残ったのは果てしない疲労感と捨てるのに困る弁当ガラだけです。どうにもやりきれない。骨折して弁当買って食べるのは最悪だなということがわかりました。

 

全てがひと段落したので腕を吊っている三角巾を外します。外したときの開放感たるや、右手が愛おしくなります。

右手が使えないだけで行動が大きく制限されます。右腕だけは折らないようにしようというのが今回の気づきです。

 

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そういえばレジで会計したあと、レジのおばちゃんが片手でも中身を落とさないようにと袋の口を結んでくれました。ありがたい。やさしさとはまさにこのこと。骨折すると人がやさしくしてくれます。ありがたいですね。腕は折らないほうがいいです。

 

 

おわり