エリーちゃん
人形っておもしろいですよね。
無機質なのになんかニンゲン的な体温があるじゃないですか。体温といっても温かいとか冷たいとかそういうわけじゃなくてそれを見てほっこりしたりヒヤッとしたりっていう抽象的な温度ですが。
人であって人ならざるというか、まるで人から乖離してしまったわけでなくどことなく雰囲気を残す人間を模したミニアチュールってすごくいいんですよ。
それらは大抵不気味で、艶やかで、こちらに何かを訴えてるかのような、まったくこちらを気にしていないような、近景的でまた遠景的な距離感をこちらに与えてくれます。
人形の顔の造形も楽しげであったり、悲しげだったりそれぞれ違っておもしろいです。だいたい狂気じみてるんですよね。
先日、銀座のヴァニラ画廊で開催されている『人造乙女美術館』というラブドールの展示会に行ってきたんですがそれがまたよかったです。
ラブドールはまさに愛玩用人形と言い切ってしまってよい、愛されるために生まれてきた人形です。ダッチワイフと呼ばれていた時代もあったようですが今はすごく進化してます。エロ方面への技術の進歩ってすごいと思います。
ラブドールの顔はたおやかは日本人顔、エキゾチックなアジア人顔、キュートなアニメ顔などいろいろ用意されているのですがそれらについて気づいたことがあります。
それはどのラブドールもどこか悲しげで物憂げな表情をしているということです。
なんかそんな感じしませんか。
まぁラブドールもどういう顔してればいいかわかんないですよねきっと。
とにかく人形ってすごいんですよ。狂気だからもう。
最近は100均で人形が買えます。
冒頭の画像がそれです。
エリーちゃんって名前だそうです。
100均で人形が変える時代になってました。もっと高いものだと思ってましたが。
だから興奮してしまってそこにあるだけ買ってしまいました。
店員さんは淡々としてました。人形じゃないのに。
人形って狂気じみてておもしろいんですよ。自分が好きなおもしろさが狂って歪んだものなので感じ方はそれぞれあると思うんですが人形は狂ってておもしろいです。
何してもおもしろいじゃないですか、最高。
花壇に刺さっててもおもしろいし、カーテンレールからぶら下げててもおもしろいし、池で浮いててもおもしろいじゃないですか。何してもおもしろいスーパープレーヤーですよ。
その日の天気は生憎の雨、だから私は箱入り娘のエリーちゃんに雨に慣れてもらうために少々手荒な真似をしてしまいました。
残像もおもしろい。躍動感、生命の胎動、もともと命なんかないのに。
車を運転してるのは私ではなく仲のいい先輩です。私は自動車免許を持っていません。残念。
ワイパーにエリーちゃんをくくりつけることを許してくれた先輩の豪快さと奇矯に乗っかってくれたことには感謝してもしきれません。車間距離をめっちゃ開けられてました。安全運転できたって言ってました。安全じゃないだろ。
先輩の家で人形をどうにかしました。
髪を切ると見違えるようにかわいくなりました。かわいさは発掘されるものなのかもしれない。
左が髪を切った人形で、右がそのままのロングヘアーの人形なのですが、左のほうが快活ですね。着てる下着が体操のレオタードに見えてきました。むせ返るような元気よさを感じませんか、ねぇ。
ブレてるけどアイドルのポートレイトみたいでステキです。
エリーちゃんはたくさんいるので組んず解れつの大集合させたら迫力が出ました。
まさか迫力が出るとは。
エリーちゃんたちを立たせて写真を撮りたかったのですが100円均一のコストパフォーマンスがそこまで面倒見てなかったのでエリーちゃんたちは自分たちの足で立つことはできませんでした。
ですので吊るしました。とってもフォトジェニックです。
まさかと思って大集合させたらこれまた迫力が出ました。この迫力は靴下ぶら下げても出せません。数の力でもなく彼女らが持つ力によるものだと思います。すごくいい。
恐ろしくて目を背けたくもなるのですがおもしろいんですよこれまた。
思わず笑ってしまいました。あはは。
かわいいし。
帰り際に先輩にエリーちゃんを差し上げたのですがお気に召さなかったようで駅前に投げ捨てて帰宅されてしまいました。かわいそうなエリーちゃん。
その先輩は今左肩がべらぼうに痛くて、夜中0時にピンポンが3回鳴ったけど出ても誰もいなくて、まさか捨てられたエリーちゃんが帰ってこようとしているのかと錯覚してしまうような怪現象に悩まされているそうです。私は元気。
ではまた。