チョコパイは爆発しました。
水たまりに落ちて水を吸ったチョコパイは口の中でサッとほどけて最悪でした。
チョコパイってなにかしらの高級感がないですか？シルベーヌに次ぐ高級品、そうした位置づけをしていませんでしたか？していたあなたはエンゼルパイをチョコパイの偽物だと忌み嫌い、弟にこれが貧乏人のチョコパイだ、と騙して食べさせていたはずです。老人ホームで行われる餅まきに必ずと言っていいほど混入していたのはチョコパイではなくエンゼルパイでした。ジジイおばさん子どもがもみくちゃになって撒かれる餅を拾い集める中踏まれてぐちゃぐちゃになったエンゼルパイ。エンゼルパイはチョコパイではない。もうやめてくれ。また偽物だ、と言って食べかけのエンゼルパイをうちの田んぼに投げるのはやめてくれ。絶対に許さないからな。俺、餅まきの必勝法見つけたわ、と廣野くん。餅まきに勝ち負けなんてなくて皆が這いつくばって食べ物を拾う光景が「負け」そのものだと思った。敗戦国。彼の必勝法とは傘を逆さまにしてパラボラアンテナのように降り注ぐ餅の雨を受けることであった。彼の試みは成功したが老若男女から顰蹙を買ったため結果として最悪の事態を巻き起こした。卑しい子、と老人は子供をなじり、子供は子供を無視しはじめた。恐るべし。最適な分配など行われようがないのに。紙からはみ出すほど大きなドクロマークを書いた手紙を老人ホームに送って彼は夏休みに転校していった。
